旅行はここ数年、キャリアづくりに大きな影響を与えてきました。
例えば、仕事と休暇の垣根も曖昧になってきています。
インターネットの時代になると、パソコンひとつあればどこでも働けるようになり、各地を「旅をしながら働く」そんなスタイルも広がっていきました。
しかし、コロナ禍でその働き方も大きな影響を受けました。
移動の自粛が呼びかけられたことで、感染拡大状況によっては、住んでいる都道府県から出にくい時期もありました。
その時期に注目されたのが、近くを旅行する「チカバケーション」です。
気軽に遠くへ行けない時期にその代わりとして、県内や市内などの近場へ旅行する旅行プランやキャンペーンも広がりました。
旅行業界大手の星野リゾートも「マイクロツーリズム」と名付け、その地域の魅力を市内や県内に住む人に向けて発信したのです。
どこまでをチカバケーションやマイクロツーリズムとするのか、その明確な定義はありません。けれども個人的な理解では、市内、県内など日帰りでも行ける場所がそれにあたるのかなと思っています。
こう考えると、市内や県内など、数分〜1時間程度で行ける場所も観光地に早変わりします。
身近な場所を観光地として捉えると、どんな変化があるでしょうか。
それは、いつも当たり前のように住んでいる街を再発見する機会が生まれるのです。
私が活動する群馬県前橋市でもそんな可能性を感じています。
前橋市の郊外にある赤城山エリアは、東西に広く山麓にはさまざまな見どころがあります。
一方で、観光客は赤城山の山頂エリアを目指すことが多く、まだまだプロモーションの余地がありました。
そこで今年2月、チカバケーションツアーを開催しました。
選んだのは、赤城山のパワースポットとも言われる櫃石です。
6世紀頃の祭祀遺産で、群馬県の指定史跡にも選ばれている重要な場所ですが、地元の人も行ったことがない人が多い場所でした。
人があまり行かないことから、登山道も整備されておらず、どうやって行くのかもわかないような感じでした。
でも山を登ると突然開けた場所があって、そこに大きな岩が佇んでいる不思議な場所です。
ちょっとした異日常が感じられる、まさにチカバケーションとも言える場所です。
そこで、地域の歴史に詳しい郷土史会の方々と連携し櫃石へトレッキングを企画しました。
当日は、市内に住む数名の方に参加いただき、「前橋にこんな場所があるとは知らなかった!」という感想をいただきました。まさにチカバケーションな体験です。
このように各地域には、住んでいても意外と知らない素晴らしい場所やモノがたくさん眠っているのです。
それを地域に住む方々が、地域の魅力をチカバケーションを楽しみながら、再発見していくことは、大いに可能性がありそうです。
そして、これをキャリアパーツにするのはどうでしょうか。
近隣の市町村に住む方へチカバケーションのツアーとして提供することも大いにあるのではないでしょうか。
各地域には、歴史や文化など伝えていくべき事柄が多く残されています。
しかし、担い手不足などによりそれらの継承が途絶えてしまう可能性もあります。
そこで、そうした大切な事柄をチカバケーションを通じて、新たな旅行商品に変えていく。
そんな活動に可能性を感じます。
このようなプログラムを提供する人は、チカバケーションクリエイターとして、新たな複業のキャリアをつくることにも繋がるでしょう。
アフターコロナになっても、チカバケーションとして地域を巡ることで地域の魅力を再発見し、またひとりひとりがチカバケーションガイドやクリエイターとして活動する貴重な機会になるはずです。
この動きは、コロナ禍での感染拡大防止の観点から始まりましたが、決して一過性のものではなく、今後も広がっていくと感じています。