できるやんか!

この週末は中井政嗣氏の「できるやんか!」を読ませていただいた。丁稚奉公から身を起こし、いまや全国にお好み焼きチェーン店を展開する「千房」の中井政嗣社長はいかにして今日の地位を築いたのか。

この本は先日退職した従業員からもらったものだが、これがまた滅多にないようないい内容で感動し一気に読破させられた。実は中井社長は私と同郷で奈良の出身、家もそれほど離れていない。年齢は丁度(生きていれば)私の父と同じ、そして、私も学生時代はお好み焼き屋で深夜バイト(夜の10時~深夜2時まで)していた関係もあって内容がリアルに伝わってくる。特に客のクレームとかヤクザとか・・・さすがに深夜にまともな客はあまり来なかったような気がする。そんなわけで当時は給料日以外は「こんなバイト今日でやめたる」と後ろ向きな気持ちで毎日仕事をしていたのである。更に逃げるに逃げられない経営者の心情も解るし、子供3人と言うのも私と同じだ。そういうわけで親近感をもって読ませていただいた。舞台のミナミも学生時代はよく遊びに行ったものだ。すれ違っていたことがあっても不思議ではない。

ここではその内容にはふれないが、私が考えさせられたのはここアメリカと日本の違いだ。かなりの独断と誤解を承知で言うと、「アメリカ企業は知識で経営し、日本企業は知恵で経営している」と言えそうだ。勿論、すべてがそうではないが、この本に登場する人達からはそれが伝わってくる。ここでいう知恵とは大阪商人が何百年かけて熟成させてきたものだ。そのなかにいわゆる大阪風の泥臭い人情も含まれる。

アメリカという若い国には最先端の知識が集まっているが、それがまだ熟成されていないのかもしれない。だからこそいやおうなしに知識と論理的な手法を駆使した経営になりがちなんだと思う。まあ、こういうアメリカ式の経営手法を日本に持ち込んでもそのままでは上手くいかないような気がした。いや日本だけじゃないアメリカのなかでも上手くいかない感じがする。アメリカの家庭や社会が日本より深刻な問題を抱えているということを考えるとそのへんはお察し頂けると思う。

いずれにせよ、完熟した人間性と経営哲学をもつ中井社長には魂のレベルで見習う事が多い。日本の経営者はアメリカ流の合理主義や目先の損得に走る事無く日本人が培ってきた商いに対し誇りを持ち厳しい経営環境の中にあっても大切なものを見失わないでもらいたいと願う。

返信する

コメント