「人間たることにおいて、何が最も大切であるか。
これをなくしたら人間では無くなる、というものは何か。
これはやっぱり徳だ、徳性だ。
徳性さえあれば、才智・芸能はいらない。
否、いらないのじゃない、徳性さえあれば、
それらしき才智・芸能は必ずできる」
(「人間の本質と属性」より)
「活動して腹が減れば、食欲が出るのと同じで、
多忙になると、却(かえ)って求道(ぐどう)心が
旺盛になり、頭が働くものです。
多忙、大いによろしい」
(「忙しくてはだめか」より)
「人間はどんなことが起こっても、
自由自在に対応できる、
そういう適応力を不断に養わなければいけない。
それには絶えず自力を養成しなければならぬ。
他の力に頼っていてはだめです」
(「危険な錯覚」より)
「どんな忙人にでも、寸陰(すんいん)というものはある。
ちょっとした時間というものは必ずある。
そのちょっとした時間をつかむのです。
これに熟練すれば、案外時間というものはあるものです。
昔から一藝一能に精進した人々は、
みな体験しておることです」
(「寸陰を惜しむ」より)
「現代人の一般的缺陥(けっかん)は、
あまりに雑書を読み、雑学になって、
愛読書、座右の書、私淑する人などを持たない。
一様に雑駁(ざっぱく)・横着になっている。
自由だ、民主だということを誤解して、
己をもって足れりとして、人に心から学ぼうとしない。
これは大成するのに、もっとも禁物であります」
(「愛読書・座右書」より)