もうかれこれ20年も前の話

私は奈良県の飛鳥にある高校に通っていた。その頃目指していたのは日本画家。私に日本画の世界を教えてくださった美術の岩崎先生の恩師である烏頭尾精(うとおせい)画伯が同じ飛鳥に居を構えられていた。

正確な時期は覚えていないが、その烏頭先生のお宅に書きためたスケッチを持って押しかけたことがあった。電話アポ一本を入れて尋ねた画学生を先生は笑顔で迎えてくださった。私は凄く緊張していたのだろうと思う。月日が経ったせいか、そのときお話いただいたことや、絵に関するアドバイスはどうしても思い出せない。しかし思い出せるものがひとつだけある。

先生のお話をお伺いしているとき、先生の奥様がお茶をもって来てくれた。そして「ほら彼は絵を描くのが好きだよ」と仰ってご夫婦で私のスケッチをご覧になっておられた。その時のなんとなく嬉しい気持ちは今もハッキリと覚えている。

こんなことを書きたくなったのは、偶然に烏頭尾先生の記事を発見したから。

http://mytown.asahi.com/nara/news.php?k_id=30000121005210001

キトラ古墳の四神壁画(青龍、白虎、朱雀、玄武)の模写をされたみたいだ。「なぜこんなきれいな線が引けるのか」と驚きを隠せなかったと仰る先生には我々には見えないものが見えているのかもしれない。

78歳というお年にも拘らず、感性豊か。なによりお元気そうな写真もあって懐かしく思った。

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