日本出張記

明日には日本を発つ。 今日はチャリンコを借り、京都伝統工芸品館を皮切りに、平安神宮、南禅寺、永観堂等に足を運んだ。主なテーマは1.観光業、2.フォトコンテスト、3.伝統工芸である。京都の若手工芸作家が主催する「京都匠塾」の店舗にも足を運んで現物を拝見させて頂いた。

http://www.kyoto-np.co.jp/kp/special/omoshiro/hito08_05.php 

伝統工芸品に関してだが、確かに質は良いのだが、価格が高い。例えば竹で編んだコースターが1枚2000円。この価格では2~3枚買っておこうという気にはならないのは私だけではないと思う。これが1枚500円なら話は別。つまり現在市場に出回っている競合商品との価格競争に於いて、明らかに惨敗を帰している。他の商品に於いても事情は同じだ。大量生産の中国製であれば値札は10分の1。どうすればこのギャップを埋めることが出来るのだろうか・・・。そんなことを考えながら一日を過ごした。

「伝統の逆襲」の著者、奥山清行氏は「価格競争」から「価値競争」へのシフトを訴えかける。資源の括弧が叫ばれる現在の地球環境において価格競争を支える大量生産は環境破壊と直接繋がる。この考えには大いに賛同できるが、果たして消費者マジヨリティーのベクトルが価格よりも価値に移り得るかどうかは疑問が残る。奥山氏はその為の施策としてのデザインとブランド化を唱えるが、仮にブランド化に成功したとしてもそのブランドは平均的な所得の人間に於いては高嶺の花でしかないように思うのだ。したがって「価値競争」は非常にニッチなマーケットに於いてのみ発生すると予測できる。厳しい見方をすれば「ブランド化に成功しなければ伝統工芸品はいずれ淘汰される」と言えるだろう。

マーケットを大別するとこんな感じになるだろうか。いわゆる伝統工芸品は3番に該当する。

  1. 大量生産品:工業化により安く大量に作られる商品
  2. 手工芸品(海外生産):人件費の安い中国製等
  3. 手工芸品(国内生産):伝統的製作方法にのっとり基本的に手作り
  4. 作家作品:特定の作家による稀少高付加価値作品 

奥山氏はイタリアのマエストロと日本トップクラスの職人の給与差を10倍としているが、フェラーリーのように数千万円する商品を手掛ける職人と箪笥職人を同列に並べるのは難しいだろうと思う。当然のことながら、イタリアで箪笥を作っている職人との比較が必要だ。そうすれば恐らくその給与差はせいぜい2~3倍だろうと思う。これは大きな差であることは間違いないが、何も伝統工芸に限らずあらゆる業界と職種で見られる給与差だといえる。さて、職人として高給を得たいならば4番を目指して有名作家になるか、生産量の大きい工場で製造のキーパーソンになるしかない。地道にコツコツ作っていても食うのがやっとだろう。

伝統工芸のブランド化は重要な課題だ。その為には従来の「生活雑貨」「日用品」は作らない方が賢明かもしれない。車やファッションのようにオーナーの自尊心をくすぐるものに的を絞ったほうがいい。いわゆる「用の美」ではインパクトに欠けるのではないかと思う。では、伝統工芸のどの部分をブランド化し市場に送り出すべきか?どういったシナリオが描けるかを考えて行きたいと思う。

 写真は南禅寺。シンプルな石庭は「悟り」の状態を表す。境内には「六道輪廻の庭」があり、僧侶が庭に何を表現しようとしたのかが感じられて面白い。

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