「レジに並ぶ」という考えが昔話になる。スマートデバイスで実現する新時代の消費者行動。

「レジに並ぶ」という考えが昔話になる時代がやってくる。という面白い記事を見ました。
 http://markezine.jp/article/detail/16338

8月1日、IBMと東芝テックは、IBMのリテール・ストア・ソリューション(RSS)事業を東芝テックへ売却する手続きが完了したことを発表しました。創業から100年以上に渡り、常に時代の流れとともに変化してきたIBM。もともとはハード事業が主体で始まった同社ですが、近年ではそのハード事業を次々と他社へ売却し、サービスを主体と’したソフト事業へ転換を図っています。東芝テックへ買収したPOS事業ですが、それは、将来的にPOSビジネスが衰退していくということではなく、時代とともに未来の小売業のモデルに適応した形で変化していくことを意味しています。

そこで、未来の小売業の形として例に挙がっていたのは、床面積1平方フィート当たりの売り上げが全米トップの5626ドル(43万8828円)にものぼり、「世界で最も高い販売効率を誇る小売業者」という側面をもつ、米アップル社が運営する「Apple Store」です。

iPhoneをはじめとしたアップル商品の魅力は他社にはない圧倒的な差別化要素といえます。しかし、単にアップル製品を買うだけならば、アップル自らが「Apple  Store」といった実店舗をもたずとも、アマゾンを初めとしたオンラインストアや、ベスト・バイのような他社の店舗を利用しても買うことは可能です。しかしなぜ人は「Apple Store」に向かうのか。

それは、Apple Storeの生みの親、ロン・ジョンソン氏が打出した「アップル好きの集う場所」を提供するというコンセプトが見事顧客のニーズにマッチし、結果、売上に繋がっているということにあります。

言われるまで気づきませんでしたが、Apple Storeにはお会計をするためのキャッシュレジスターはありません。あるのは気さくに話しかけてくれ、アドバイスをくれるアップル好きの店員と、自由に触り、試せるサンプル端末のみ。お会計は全てiPhoneで済ませます。訪れたお客様はいつの間にかその商品の魅力に魅せられてファンになり、なんの違和感もなく、つい先ほどまで触って楽しんでいた製品で支払いまで済ませることができます。そこにはただの「利便性」という言葉に留まらない、こだわりがあるというから面白い。「レジを置くことでついさっきまで親しく話していたファンとの間にテーブル一台分のスペースができてしまう。このテーブル一台分の距離がファンから消費者へと、近づいた距離を引き離してしまう。このファンとの距離を変えずに、ファンのまま会計を済ませる方法として、ファンの対面では無く、隣に立てる会計方法として、このiPhoneを利用した「どこでも会計できるスタイル」を採用している。」そうです。

消費者としては、まんまとこのアップルの戦略に乗せられているわけですが、実に見事な顧客ロイアルティの獲得方法だと感心せざるを得ません。

ロン・ジョンソン氏は現在、ニューヨークミッドタウンにもある米国老舗デパート、JCペニーのデパート改革も手がけているとのこと。JCペニーは毎日通勤途中に通るのですが、ガードマンの数に比べて、お客の数が非常に少なく、廃れてしまった寂しい印象を受けていました。ジョンソン氏は2013年内に現金決算を全廃し、それにともないキャッシュレジスターを全廃するといったIT化によるコスト削減計画を発表しており、それらにより基礎を作り上げた後には、O2OやARを活用した「訪れる価値のある店づくり」を実現していくと話しています。JPペニーがApple Storeのような変貌を遂げられるのか。今後に期待したいところです。

情報化とグローバル化の二つの波が消費者行動を大きく変化させ、オンラインショッピングが一般的に普及する時代となりました。そんな中「実店舗」をもつことにどのような価値を見出すのか。それは、Apple Storeの成功に学ぶ部分が多くあるかと思います。いずれにしても、実店舗とオンラインショッピングサイト、双方の今後を支えているのはWeb技術やITソリューションであることは間違いありません。

 

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